魚の旨味を余すことなく味わう「なか落ち」
料理を知りたい
先生、『なか落ち』って言葉を初めて聞きました。魚を3枚におろしたときの中骨の部分のことですよね?
料理研究家
うん、ほぼ正解!中骨の部分だけじゃなくて、中骨についている身の部分も『なか落ち』っていうんだよ。だから、骨だけじゃなくて、おいしい身もついているんだ。
料理を知りたい
なるほど!じゃあ、中骨と身の両方のことなんですね。どんな料理に使われるんですか?
料理研究家
そうだね。『あら煮』にしたり、骨から良いだしが出るので、『すり流し汁』や『吸い物』にもよく使われるよ。魚のうまみを味わえる、大切な部分なんだ。
なか落ちとは。
魚を三枚におろした後に残る、真ん中の骨とその周りの身のことを『なか落ち』といいます。この部分は捨てずに、あら煮や、すり身にした汁物、お吸い物などに使われます。
「なか落ち」とは
「なか落ち」とは、魚を三枚におろした後に残る、中骨とその周辺に付いた身のことです。魚の背骨に沿って、腹骨の上部に位置し、ごくわずかな量しか取れません。しかし、魚本来の味が凝縮されている貴重な部分であり、捨てずに様々な料理に役立てられています。
この骨周りの身は、加熱することで骨から美味しい成分が溶け出し、独特の風味と深い味わいが生まれます。魚の種類によってその味わいは異なり、脂の乗った魚では濃厚でコクのあるだしが取れます。一方、白身魚ではあっさりとして上品なだしが取れ、それぞれの魚の持ち味を楽しむことができます。こうした理由から、和食では古くから大切に扱われてきました。
なか落ちは家庭料理から料亭まで、幅広く使われる食材です。例えば、味噌汁や煮物のだしとして加えることで、料理全体に深みが増します。また、細かく刻んでつみれに混ぜ込んだり、炊き込みご飯に利用したりと、様々な調理法で楽しむことができます。ご飯と一緒に炊き込むと、骨から出る良い香りがご飯全体に広がり、食欲をそそります。さらに、油で揚げて骨せんべいとして味わうのもおすすめです。カリッとした食感と香ばしい風味は、お酒のおつまみにもぴったりです。このように、なか落ちは無駄なく魚を味わう知恵が詰まった、日本料理ならではの食材と言えるでしょう。
部位 | 特徴 | 利用方法 | 効果・風味 |
---|---|---|---|
なか落ち | 魚を三枚におろした後に残る中骨とその周辺の身 | だし、つみれ、炊き込みご飯、骨せんべい | 濃厚なだし、上品なだし、良い香り、カリッとした食感と香ばしい風味 |
脂の乗った魚のなか落ち | だし | 濃厚でコクのあるだし | |
白身魚のなか落ち | だし | あっさりとして上品なだし | |
炊き込みご飯 | 骨から出る良い香りがご飯全体に広がる | ||
骨せんべい | カリッとした食感と香ばしい風味 |
下処理の方法
「なか落ち」は魚を三枚におろした際に残る、中骨周辺の身のことです。この部位は、様々な料理に活用でき、魚本来の旨みを存分に味わうことができますが、美味しく食べるためには適切な下処理が不可欠です。
まず、中骨に残っている血合いや内臓の残りなどをきれいに取り除くことから始めましょう。骨の隙間に血合いが入り込んでいる場合は、歯ブラシや竹串などを用いて丁寧に除去します。特に内臓周辺は、丁寧に作業を行いましょう。次に、流水でしっかりと洗い流し、残った汚れや血を洗い落とします。水洗いが終わったら、清潔な布巾や調理用の紙で水気を丁寧に拭き取ります。表面に水分が残っていると、臭みの原因となるばかりか、後の調理工程にも影響を及ぼすため、しっかりと拭き取ることが大切です。特に、鮮度が落ちやすい青魚は、より丁寧に下処理を行いましょう。
下処理が終わったら、調理方法に合わせて「なか落ち」を切っていきます。煮物にする場合は、食べやすい大きさに切り分け、骨から身がほぐれやすくなるよう、骨に沿って切り込みを入れると良いでしょう。汁物や吸い物に使う場合は、骨から身が剥がれやすいように、骨に沿って包丁を入れ、細かく刻むことで、骨から良い出汁が出やすくなります。揚げ物に使用する際は、水気をしっかり切り、食べやすい大きさに切り分けます。
適切な下処理を行うことで、魚の臭みを抑え、「なか落ち」本来の旨みと風味を存分に楽しむことができます。また、調理方法に合わせて切り方を変えることで、それぞれの料理に最適な状態に仕上げることができ、より美味しく「なか落ち」を味わうことができます。
下処理 | 調理方法 | ポイント |
---|---|---|
血合い、内臓の残りなどを除去 歯ブラシや竹串を使用 流水で洗浄 水気を拭き取る |
煮物 | 食べやすい大きさに切る 骨に沿って切り込みを入れる |
汁物、吸い物 | 細かく刻む | |
揚げ物 | 水気を切る 食べやすい大きさに切る |
定番料理「あら煮」
魚のあらを使った定番料理といえば、「あら煮」です。家庭で親しまれるこの料理は、魚のアラから出る旨味を存分に味わえる、滋味深い一品です。
「あら煮」を作る上で最も重要なのは下ごしらえです。魚のあらを熱湯でさっと茹でることで、生臭さを取り除き、仕上がりが格段に良くなります。このひと手間を加えることで、より美味しく食べられます。下茹でしたあらは、醤油、砂糖、みりん、酒でじっくりと煮込んでいきます。みりんと酒は煮詰めることでアルコール分が飛び、風味とコクが生まれます。砂糖は甘みだけでなく、照りも出してくれます。
あらと一緒に煮込む野菜も「あら煮」の魅力を引き立てます。大根はあらの旨味をたっぷりと吸い込み、柔らかく煮崩れそうになるまで味が染み込んだところは格別です。こんにゃくは味が染み込みにくい食材ですが、あらと一緒に煮込むことでしっかりと味が染み込み、独特の食感が楽しめます。豆腐はあらから出る良いだしを吸って、ふっくらと仕上がります。
じっくりと時間をかけて煮込むことで、骨まで柔らかくなり、骨周りの身もホロホロと崩れるくらいに柔らかくなります。家庭によって味の濃さは様々ですが、濃いめの味付けにすることでご飯が進む一品となり、家族みんなで楽しめる定番の家庭料理です。また、冷めても美味しいので、お弁当のおかずにも最適です。
「あら煮」は、魚のアラを無駄なく美味しく食べられる、節約料理でもあります。魚を捌いた後に残ったあらを使って、手軽に作れるのも嬉しい点です。ぜひ、ご家庭でも「あら煮」を作ってみてください。
項目 | 詳細 |
---|---|
概要 | 魚のあらを使った定番の家庭料理。あらの旨味を存分に味わえる滋味深い一品。 |
下ごしらえ | あらを熱湯でさっと茹でることで生臭さを除去。 |
調味料 | 醤油、砂糖、みりん、酒。 みりんと酒は風味とコク、砂糖は甘みと照りを出す。 |
一緒に煮込む野菜 | 大根:あらの旨味を吸い込み柔らかく仕上がる。 こんにゃく:味が染み込み、独特の食感が楽しめる。 豆腐:だしを吸ってふっくらと仕上がる。 |
特徴 | 骨まで柔らかくなる。 濃いめの味付けでご飯が進む。 冷めても美味しいのでお弁当にも最適。 魚のアラを無駄なく使える節約料理。 手軽に作れる。 |
汁物や吸い物にも
汁物や吸い物にも「なか落ち」は活躍します。「あら煮」で残った骨周りの身も無駄なく使えるので、家計にも優しく、魚を余すことなく味わうことができます。
特に「なか落ち」の旨味を存分に引き出す調理法として、すり流し汁がおすすめです。「なか落ち」を丁寧に洗い、血合いや内臓の残りなどをきれいに取り除きます。鍋に水と昆布、香味野菜であるネギの青い部分やショウガの皮などと一緒に「なか落ち」を入れ、弱火でじっくりと煮出していきます。魚の旨味が溶け出しただし汁ができたら、「なか落ち」を取り出し、骨と皮を取り除いて身をほぐします。この時、骨が小さいため、丁寧に作業することが大切です。
ほぐした身に、だし汁で柔らかく煮たニンジンやダイコンなどの野菜を加え、滑らかになるまでミキサーにかけます。なめらかな舌触りと、魚の旨味が凝縮された濃厚な味わいが特徴のすり流し汁の完成です。お好みで、彩りに刻んだミツバやユズの皮などを添えると、見た目も美しく、風味も豊かになります。
また、吸い物に「なか落ち」を使うと、上品なだしが出て、椀物に深みが増します。お祝い事や特別な日のおもてなし料理にもおすすめです。昆布とカツオで丁寧にとった一番だしに、「なか落ち」でとった二番だしを合わせ、シンプルに塩で味を調えることで、「なか落ち」本来の美味しさが引き立ちます。椀種には、季節の野菜や焼き魚、鶏肉など、様々な食材と合わせることができます。ハレの日の食卓を彩る、上品な吸い物は、おももなしに最適です。
料理 | 材料 | 作り方 | ポイント |
---|---|---|---|
すり流し汁 | なか落ち、水、昆布、香味野菜(ネギの青い部分、ショウガの皮など)、ニンジン、ダイコン、ミツバ、ユズの皮 | 1. なか落ちを洗って血合いと内臓の残りを取り除く。 2. 鍋に水、昆布、香味野菜となか落ちを入れて弱火で煮出す。 3. なか落ちを取り出し、骨と皮を取り除いて身をほぐす。 4. だし汁で柔らかく煮たニンジンとダイコンを加え、ミキサーにかける。 5. 彩りにミツバやユズの皮を添える。 |
骨が小さいので身をほぐす際は丁寧に作業する。 |
吸い物 | なか落ち、昆布、カツオ、塩、椀種(季節の野菜、焼き魚、鶏肉など) | 1. 昆布とカツオで丁寧にとった一番だしになか落ちでとった二番だしを合わせる。 2. 塩で味を調える。 3. 椀種を添える。 |
シンプルに塩で味を調えることで、なか落ち本来の美味しさが引き立つ。 |
無駄なく美味しく
「魚の中落ち」と聞くと、食べにくい骨が多くて少し面倒なイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、中落ちは魚の旨みが凝縮された、捨ててしまうにはもったいない、隠れた逸品です。昔から日本で大切に食べられてきた中落ちは、魚を余すことなく味わう、先人の知恵の結晶と言えるでしょう。
中落ちは、一見すると骨が多く処理が大変そうに思えますが、少しの手間をかけるだけで、驚くほど美味しく食べられます。まず、中落ちについている血合いや内臓などの不要な部分を丁寧に洗い流し、キッチンバサミで骨を切り離していきます。骨の周りの身は旨みが詰まっているので、丁寧にこそげ取ることが大切です。
下処理が終わったら、いよいよ調理です。中落ちは、焼く、煮る、揚げるなど、様々な調理法で楽しむことができます。手軽に味わいたいなら、塩焼きがおすすめです。グリルで焼けば、香ばしい香りが食欲をそそります。骨まで柔らかくなるので、丸ごと食べられます。また、醤油、みりん、砂糖で甘辛く煮付けたり、衣をつけて唐揚げにしたりするのも良いでしょう。野菜と一緒に炒め物にするのも、ご飯が進む一品です。
中落ちは、魚の種類によって味わいが異なるのも魅力です。脂の乗ったブリの中落ちは、とろけるような食感と濃厚な旨みが楽しめます。タイの中落ちは、淡白ながらも上品な味わいが特徴です。また、鮭の中落ちは、ご飯との相性が抜群です。
中落ちは、栄養価も高い食材です。カルシウム、タンパク質、DHA、EPAなど、健康維持に欠かせない栄養素が豊富に含まれています。特に成長期の子どもや、骨を丈夫に保ちたい高齢者にはおすすめです。いつもの食卓に中落ち料理を一品加えるだけで、魚料理のバリエーションが広がり、家族みんなの健康にも貢献できます。ぜひ、魚の中落ちを積極的に食卓に取り入れて、美味しく健康的な食生活を送りましょう。
特徴 | 詳細 |
---|---|
旨み | 魚の旨みが凝縮された隠れた逸品 |
食べ方 | 少しの手間で驚くほど美味しく食べられる |
下処理 | 血合いや内臓などを洗い流し、骨を切り離す。骨周りの身は丁寧にこそげ取る |
調理法 | 焼く、煮る、揚げるなど様々。塩焼き、煮付け、唐揚げ、炒め物など |
おすすめ調理法 | 手軽に味わうなら塩焼き |
魚種による違い | ブリ:とろける食感と濃厚な旨み タイ:淡白で上品な味わい 鮭:ご飯との相性抜群 |
栄養価 | カルシウム、タンパク質、DHA、EPAなど豊富 |
おすすめ対象 | 成長期の子ども、骨を丈夫に保ちたい高齢者 |