記事数:(2)

魚介類

清流の香り、鮎の魅力

鮎は、清流を好む魚として知られており、その美しい姿と独特の香り、そして繊細な味わいで多くの人々を魅了しています。古くから日本人に親しまれてきたこの魚は、地方によって様々な呼び名を持っており、その呼び名を知ることで、鮎と人との関わりが見えてきます。 鮎といえば、その短い一生から「年魚」と呼ばれることがよく知られています。一年という短い命を燃やし尽くすように、清流を力強く泳ぎ回る姿は、まさに夏の風物詩と言えるでしょう。また、スイカやキュウリに似た独特の香りから「香魚」とも呼ばれています。この香りは、鮎が食べる川藻に由来するもので、清流で育った鮎ほど香りが強いと言われています。 呼び名は、地域によっても大きく異なります。例えば、土佐、富山、有明海などでは、シンプルに「アイ」と呼ばれています。また、秋田では「アイノヨ」、石川や和歌山では「アイナゴ」と、地域によって微妙に変化した呼び名が使われています。熊本では「アユゴ」や「シロイオ」といった、他の地域とは全く異なる呼び名も存在します。琵琶湖では、稚魚を「ヒウオ(氷魚)」と呼び、佃煮などにして珍重されています。透明で氷のように美しい姿から名付けられたこの呼び名は、琵琶湖ならではのものです。 さらに、奄美地方では「ヤジ」、沖縄では「リュウキュウウオ」と呼ばれていますが、これらは厳密には本州の鮎とは異なる種類です。このように、地域によって様々な呼び名が存在することは、それぞれの地域における鮎との深い関わりを示しています。名前を通して、その土地の文化や歴史、そして人々の鮎への愛情を垣間見ることができます。
魚介類

知られざる川の幸、鰹顛の魅力

清流長良川の秋の恵み、鮎を使った独特な食べ物があります。それが「鰹顛(かつおでん)」と呼ばれる鮎の内臓の塩辛です。一見すると、その見た目はグロテスクに感じる方もいるかもしれません。しかし、これは岐阜県長良川流域で古くから伝えられてきた伝統の味であり、地元の人々にとってはなくてはならない秋の味覚なのです。 鰹顛を作るには、まず秋に旬を迎える鮎を丁寧に捌き、内臓を取り出します。特に卵巣と精巣の部分が鰹顛の主要な原料となります。取り出した内臓は丁寧に水洗いし、血や汚れをきれいに落とします。そして、塩をたっぷりとまぶして、じっくりと時間をかけて熟成させていきます。熟成期間は製法によって様々ですが、およそ一ヶ月ほどかけてじっくりと旨味を引き出していきます。 鰹顛という名前の由来には諸説あります。その濃厚な味わいが鰹節に似ていることから名付けられたという説や、かつては乾燥させた鰹顛を鰹節のように削って食べていたことから「鰹削り」が転じて鰹顛になったという説などがあります。真偽のほどは定かではありませんが、いずれの説にも鰹節と関連付けられている点がとても興味深いですね。 鰹顛の食べ方は様々です。そのまま少量を酒の肴として味わうのも良いですし、熱々のご飯に乗せて食べるのもおすすめです。また、お茶漬けにして楽しむのも良いでしょう。独特の風味と香りが食欲をそそり、ご飯が何杯でも進んでしまいます。かつては各家庭で作られていましたが、今では限られた場所でしか作られておらず、その希少性も価値を高めています。 長良川の清らかな水で育った鮎と、古くから伝わる伝統の技が織りなす鰹顛。それはまさに、長良川の恵みと先人たちの知恵が詰まった、他に類を見ない逸品と言えるでしょう。