魚を捌く

記事数:(2)

調理器具

魚をおろすなら出刃包丁

出刃包丁は、主に魚をさばく時に使う日本の伝統的な包丁です。和包丁の一種で、西洋の包丁に比べて刃の部分は壊れやすい反面、非常に鋭い切れ味を持っています。出刃包丁は、その中でも特に魚の骨まで切れる厚みと重さを持つ刃が特徴です。魚を丸ごと一匹さばく際に、頭を切り落とす、骨を断ち切る、といった作業に欠かせない道具と言えるでしょう。その力強さと鋭い切れ味のおかげで、魚料理を好む人たちにとって、なくてはならないものとなっています。 家庭で使う場合は、小回りが利く小出刃包丁がおすすめです。小出刃包丁にも様々な種類があり、刃渡りによって、適した魚の大きさが違います。鯵くらいの大きさの魚であれば、刃渡り10~12㎝の小出刃包丁が使いやすいでしょう。小ぶりで扱いやすく、細かい作業にも向いています。一方、鯖以上の大きな魚には、刃渡り15~20㎝のものを選ぶと良いでしょう。大きな魚でも骨を断ち切るのに十分な力強さを持ち、作業効率も上がります。出刃包丁を選ぶ際には、家庭でよく使う魚の大きさを考えて、適切な刃渡りのものを選ぶことが大切です。 出刃包丁は、しっかりと手入れをすることで、切れ味を長く保つことができます。使用後は、すぐに洗い、水気をよく拭き取ってから保管しましょう。また、定期的に砥石で研ぐことで、切れ味がよみがえります。出刃包丁は、適切な使い方と手入れをすることで、長く愛用できる、頼もしい調理道具です。
切る

大名おろし:魚のぜいたくな三枚おろし

「大名おろし」という耳慣れない言葉に、どのようなおろし方か想像もつかない方もいらっしゃるかもしれません。この名前の由来は、贅沢なおろし方にあります。 私たちがよく知る三枚おろしは、魚の背骨と腹骨の両側から包丁を入れて、身を骨から剥がすように切り離していきます。しかし、大名おろしは背骨側から一気に刃を入れ、腹まで切り進める大胆なおろし方です。そのため、骨に残る身の量は多く、切り取られる身の部分は少し小さくなります。一見すると、何とももったいないように思えるかもしれません。 しかし、このおろし方には、魚を大切に扱う、古き良き時代の精神が込められています。昔の日本では、武家社会において魚の調理は、武士の作法の一つとして大切にされていました。限られた食材を無駄なく使い切る技術は、まさに生きる知恵だったのです。大名おろしで骨に残った身は、捨てられることなく、様々な料理に活用されました。魚のあら汁や、つみれ、炊き込みご飯など、骨周りの旨味が溶け出した料理は格別の味わいでした。 現代社会においては、食品ロスが問題視されています。食べられるのに捨てられてしまう食品の量は、想像以上に多いのが現状です。大名おろしは、食材を最大限に生かすという、現代にも通じる大切な考え方を私たちに教えてくれます。骨に残った身も余すことなく活用することで、魚の旨味を存分に味わうことができ、食品ロス削減にも貢献できるのです。大名おろしは、先人の知恵が詰まった、無駄のない調理法と言えるでしょう。