
IH加熱方式の仕組みと利点
電磁誘導加熱とは、簡単に言うと磁力を使って物を温める方法です。正式には電磁誘導加熱方式と呼び、私たちの身近なところではIH調理器に利用されています。
仕組みを詳しく見ていきましょう。IH調理器の中には、電磁石を作るためのコイルが隠されています。このコイルに電気を流すと磁力が発生しますが、ただ電気を流すだけでは不十分です。電磁誘導加熱で重要なのは磁力の変化です。電流の向きを素早く変えることで、発生する磁力の強さも素早く変化させるのです。この変化する磁力が、金属製の鍋やフライパンに近づくと不思議な現象が起こります。
鍋やフライパンなどの金属は電気を通しやすい性質があります。変化する磁力が金属に近づくと、金属の中にも電気が流れ始めるのです。これは電磁誘導と呼ばれる現象で、まるで磁力が金属の中に電気を誘導しているかのようです。金属の中に発生するこの電気は、渦を巻くように流れるため渦電流と呼ばれます。
渦電流は金属の中を流れる際に抵抗を受けます。電気の通りやすさは金属の種類によって異なり、抵抗が大きい金属ほど電気が流れにくくなります。この抵抗によって渦電流のエネルギーの一部が熱に変換されるのです。これが電磁誘導加熱の原理です。
ガスコンロのように炎で加熱するわけでも、電気コンロのように熱した金属板に鍋を接触させて加熱するわけでもありません。鍋自身が発熱するため、熱効率が非常に高く、無駄な熱を発生させずに調理ができます。また、炎が出ないので安全面でも優れています。このように、電磁誘導加熱は、これまでの加熱方法とは全く異なる革新的な調理方法と言えるでしょう。