金沢

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料理ジャンル

加賀百万石の滋味、治部煮

治部煮とは、石川県金沢市を代表する郷土料理の一つで、とろみのある汁で煮込んだ鴨肉と野菜が特徴です。その名前の由来には、いくつかの説が伝えられています。中でも有力とされているのは、安土桃山時代まで遡ります。関ヶ原の合戦で徳川家康に味方した武将、前田利家が慶長4年(1599年)に加賀藩百万石の領主として金沢城に入城した際、岡山出身の郷士、津田治部少輔がもてなした料理が起源というものです。 治部少輔が考案した料理は、鴨肉に小麦粉をまぶして焼き、だし汁で煮込み、野菜や麩などを加えたものでした。この料理を食した利家は、その滋味あふれる味わいにすっかり魅了され、たちまち気に入ってしまったそうです。その後、この料理は津田治部少輔の名にちなんで「治部煮」と呼ばれるようになり、金沢の武家社会を中心に広まっていきました。とろみのある汁は体を温める効果があり、冬の寒さが厳しい北陸地方の気候にもよく合っていたため、庶民の間にも定着していったと考えられています。 時代と共に、鴨肉だけでなく、鶏肉や山鳥などの肉が使われるようになり、野菜も季節のものを取り入れるなど、様々な工夫が加えられて、現在の治部煮の原型が完成しました。金沢では、家庭料理としても親しまれており、各家庭で受け継がれた独自の味が楽しまれています。また、料亭や旅館などでも提供されており、金沢を訪れる観光客にも人気の郷土料理となっています。現在では、金沢を代表する郷土料理として全国的に知られるようになり、その独特の味わいは多くの人々を魅了し続けています。