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懐かしの味、板蕨の魅力を再発見

板蕨(いたわらび)とは、山菜として知られる蕨(わらび)の根茎から丁寧に精製して作られる、貴重なデンプン質の食品です。別名で蕨粉(わらびこ)とも呼ばれています。一見すると黒みを帯びた半透明の板状で、まるで濃い琥珀のような独特の光沢を放っています。乾燥させた保存食であるため、軽く、持ち運びにも便利です。 古くから、飢饉や食糧難の際に人々の命をつないできた、まさに救荒食としての役割を担ってきました。山深く分け入って蕨の根を掘り起こし、時間をかけて丹念にデンプンを抽出し、乾燥させるという大変な手間をかけて作られます。そのため、かつては非常に貴重な食材として扱われ、大切に保存されていたのです。 現代では、食料事情が安定し、板蕨を常食とする必要性は少なくなりましたが、その独特の食感が好まれ、様々な料理に活用されています。水で溶いて加熱すると、とろみがつき、独特のぬめりと弾力のある食感に変化します。この独特のプルプルとした食感と、ほのかな土の香りが、懐かしさを感じさせ、日本人の心に響くと言えるでしょう。 わらび餅をはじめ、和菓子の材料として利用されることが多く、繊細な風味と舌触りを活かした上品な味わいを生み出します。また、汁物にとろみをつけるために用いられることもあり、料理全体にコクと深みを与えます。さらに、近年では、その独特の食感を活かした創作料理にも利用されるなど、新たな可能性を秘めた食材として注目を集めています。歴史に深く根付いた伝統食でありながら、現代の食卓にも新たな彩りを添える、魅力的な食材と言えるでしょう。