蒸し菓子

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かるかん:ふわふわ食感の秘密

かるかんは、鹿児島を代表する銘菓として、その独特の風味と食感が多くの人々を魅了しています。その歴史は古く、江戸時代まで遡ると言われています。当時は軽羹(かるかん)と呼ばれる蒸し菓子が中国から伝来し、米粉や小麦粉を主原料としていました。この軽羹が、現在の鹿児島かるかんの原型になったという説が有力です。 はじめは米粉を用いて作られていたかるかんですが、薩摩藩の時代に入り、ある変化が訪れました。鹿児島特産のやまいもを使うようになったのです。このことが、かるかんの食感を大きく変え、独特のふわふわとした食感を生み出す決め手となりました。やまいも特有の粘りが、かるかんに今までにない軽さと口どけの良さを与えたのです。 薩摩藩主である島津家はこの新しいかるかんを気に入り、特別な菓子として扱いました。かるかんの製法は門外不出とし、大切に守られました。当時、かるかんを口にすることができるのはごく限られた人々だけで、大変貴重なものでした。 明治時代に入り、薩摩藩が消滅した後も、かるかんは鹿児島の地に根付き、人々に愛され続けました。そして現代では、鹿児島を代表するお土産として全国にその名を知られるようになりました。地元の人々にとっては、ふるさとの味として、また、観光客にとっては、旅の思い出として、かるかんは鹿児島の食文化を象徴する存在となっています。今もなお、伝統の製法を守りながら、職人が一つ一つ丁寧に作り上げています。
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ゆべし:素朴な風味を味わう

ゆべしは、東北地方に古くから伝わる郷土料理であり、その起源は平安時代まで遡るとされています。ゆべしという言葉の由来には様々な説がありますが、漢字で「柚餅子」と書くことからもわかるように、元々は柚子の実が使われていたという説が最も有力です。当時は砂糖が大変貴重であったため、甘みを加えるために柚子の皮や果汁をふんだんに用いていました。また、柚子には保存性を高める効果もあるため、ゆべしは貴重な保存食として人々に重宝されていました。 ゆべしは、その独特のもちもちとした食感と柚子の爽やかな香りが特徴です。材料には、もち米やうるち米の粉に、柚子の皮や果汁、味噌、醤油などを加えて練り合わせ、蒸したり焼いたりすることで作られます。地域によっては、クルミやゴマなどの木の実を加えることもあり、それぞれの土地で独自の風味や形が発展していきました。 東北地方では、ゆべしは冠婚葬祭などの特別な行事に欠かせない料理として、大切に受け継がれてきました。お祝い事には紅白のゆべしを、お葬式には黒や茶色のゆべしを用意するなど、行事によって色や形を変える風習も各地で見られます。また、日常のおやつとしてはもちろん、贈答品としても人気があります。現代では、砂糖が容易に手に入るようになったため、柚子を使わずに砂糖で甘みをつけたゆべしも多く作られています。しかし、伝統的な製法で作られた柚子の香るゆべしは、今もなお多くの人々に愛され続けています。その素朴ながらも奥深い味わいは、日本の食文化の豊かさを物語る一品と言えるでしょう。