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下ごしらえ

料理人の知恵:手水の世界

料理の世界において、手水は、調理を円滑に進めるための重要な役割を担っています。特に、餅つきやパン作り、うどん打ちなど、粘り気が強い生地を扱う際には、欠かせない存在です。これらの生地は、水分を多く含んでいるため、そのまま手で触ると、たちまち手にまとわりついてしまいます。こうなると、生地をこねたり伸ばしたりといった作業が困難になり、思うように形を整えることができなくなってしまいます。そこで活躍するのが手水です。 手水とは、簡単に言うと、調理中に手を濡らすための水のことです。しかし、ただの水道水とは少し違います。多くの場合、手水には少量の塩や酢が加えられています。塩や酢を加えることで、生地が手に付着するのを防ぐ効果が高まり、よりスムーズな作業が可能になります。また、衛生面も考慮されています。調理中に手を清潔に保つことは、食中毒を防ぐ上で非常に大切です。手水を使うことで、手をこまめに洗い、清潔な状態を保つことができます。 餅つきを例に考えてみましょう。もち米を蒸して杵と臼でつく際、手水を使わずに作業すると、蒸したもち米が手にべったりとくっついてしまいます。これでは、もち米をこねたり形を整えたりすることができません。しかし、手水を使うことで、もち米が手に付着するのを防ぎ、スムーズに作業を進めることができます。また、うどん作りにおいても、手水は重要な役割を果たします。うどん生地は非常に粘り気が強く、手水なしでは、生地を伸ばしたり切ったりすることが困難です。手水を使うことで、生地が手に付着するのを防ぎ、美しいうどんを打ち上げることができます。このように、一見地味な存在である手水ですが、料理人の知恵と技が凝縮された、まさに縁の下の力持ちと言えるでしょう。
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野菜を水に放す効果とコツ

「水に放す」とは、野菜を切った後に水に浸ける調理法のことです。包丁で切った野菜は、そのまま置いておくと、時間の経過とともに水分が失われ、しんなりとしてしまいます。また、切り口が空気に触れることで、変色してしまうこともあります。このような状態を防ぐために、野菜を水に浸けることで、みずみずしさを保ち、変色を防ぐ効果が期待できます。 水に放すことで得られる効果は、野菜の鮮度保持だけではありません。野菜の中には、独特の苦みやえぐみ、アクなどの成分を持つものがあります。これらの成分は、野菜本来の風味を損なう原因となる場合もあります。水に放すことで、これらの成分を水の中に溶け出させ、苦みやえぐみを和らげることができます。例えば、大根の輪切りを水にさらすと、特有の辛味が抑えられ、食べやすい味になります。ゴボウの場合も、水に浸けておくことで、変色を防ぐだけでなく、アクを抜いてえぐみを抑えることができます。レンコンのアク抜きにも水にさらす方法は有効で、変色を防ぎ、食感を良くしてくれます。 水に放す時間は、野菜の種類や状態によって調整することが大切です。短時間で済むものもあれば、数時間水に浸けておく必要があるものもあります。水に浸ける時間が長すぎると、野菜の栄養が水に溶け出してしまう場合もあるので注意が必要です。また、水に放す際に、流水にさらすとより効果的にアクやえぐみを取り除くことができます。流水がない場合は、ボウルに水を張り、何度か水を替えることで同様の効果が得られます。 このように、水に放すという簡単な調理法で、野菜の鮮度と風味を保ち、よりおいしく野菜を食べることができるのです。野菜の種類や特性に合わせて、水に放す時間を調整することで、より効果的に活用できます。家庭料理でよく使われる調理法なので、ぜひ試してみてください。