
春の味覚、ウドの魅力を再発見
ウドは、ウコギ科タラノキ属の多年生草本で、同じ仲間であるタラノキと同様に山菜として古くから食べられてきました。その歴史は深く、平安時代の書物にも薬草としての記述が残っているほどです。当時の人々は、ウドの持つ特有の香りと苦味を活かし、病気の治療や健康維持に役立てていたと考えられています。
食用としての栽培が本格的に始まったのは江戸時代に入ってからです。栽培技術の発達により、ウドは徐々に人々の食卓に上るようになりました。特に江戸時代中期には、土を盛って栽培する「盛土栽培」という方法が広まり、光を遮ることでウドの茎を白く柔らかく育てる工夫が凝らされました。この栽培法は、独特の食感と風味を持つウドを生み出し、人々を魅了しました。
さらに明治時代に入ると、ウドの栽培技術はさらなる進化を遂げます。「伏せ込み軟化栽培」と呼ばれる技術が確立されたことで、より柔らかく、えぐみの少ないウドの生産が可能となりました。この技術は、土の中にウドを埋め込むことで、光を完全に遮断し、さらに温度や湿度を一定に保つことで、ウドの成長を促すという画期的なものでした。こうして、春の味覚として広く知られるようになったウドは、天ぷらやおひたし、酢味噌和えなど様々な料理で楽しまれるようになり、日本の食文化に欠かせない存在へと発展していったのです。現在でも、伝統的な栽培方法を守りながら、新たな品種の開発や栽培技術の改良に取り組む生産者たちの努力により、私たちはその独特の風味と食感を楽しむことができるのです。