新じゃがいも

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下ごしらえ

こそげる技法:素材の風味を引き出す

「こそげる」とは、食材の表面を薄く削ぎ落とす、繊細な調理技法です。包丁の背やたわし、割り箸などを使い、食材の皮や不要な部分を優しく取り除きます。ゴボウを例に挙げると、その皮には独特の風味と香りが潜んでいます。包丁で厚くむいてしまうと、せっかくの風味が損なわれてしまいます。「こそげる」技法を用いることで、土や汚れといった不要な部分のみを取り除き、皮の風味を保つことができるのです。 この動作は、単なる「皮むき」とは一線を画します。皮をむくという行為は、多くの場合、果物ナイフやピーラーを用いて比較的厚く皮を取り除くことを指します。それに対し「こそげる」は、包丁の背やたわしなどを使い、食材の表面を軽くこするようにして、薄く皮を削り取ることを意味します。このため、食材本来の風味を損なわずに、土や汚れ、あるいは変色した部分だけをきれいに取り除くことができるのです。 ゴボウ以外にも、この技法は様々な食材に活用できます。例えば、新じゃがいも。みずみずしく、皮の薄い新じゃがいもは、こそげることで、皮の栄養と風味をそのまま楽しむことができます。また、レンコンもこそげることで、皮の独特の食感を残しつつ、泥や汚れを取り除くことができます。他にも、ウドやショウガなど、皮のすぐ下に風味や栄養が詰まっている食材にこそげる技法は有効です。 このように「こそげる」という技法は、食材の持ち味を最大限に活かすための、日本料理ならではの繊細な技と言えるでしょう。旬の食材の風味を存分に味わいたいという料理人の想いが込められた、無駄のない、丁寧な仕事です。食材の個性を尊重し、その魅力を引き出す「こそげる」は、まさに日本の食文化の奥深さを象徴する技法の一つと言えるでしょう。