救荒作物

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野菜類

薩摩芋:甘くて栄養満点な万能食材

薩摩芋は、我々日本人にとって馴染み深い野菜の一つです。煮物や天ぷら、焼き芋など、様々な料理で楽しまれています。ところで、この薩摩芋、一体どこからやってきたのでしょうか?実は、薩摩芋の故郷は遠い中央アメリカです。大航海時代、1492年にコロンブスがアメリカ大陸を発見した際に、ヨーロッパへと持ち込まれました。当時の記録によると、スペインの女王、イザベラにも献上されたそうです。しかし、ヨーロッパではジャガイモほどの人気を得ることはありませんでした。これは、薩摩芋が寒さに弱い植物であることが原因だと考えられています。ヨーロッパの寒い気候では、育てるのが難しかったのでしょう。 一方、日本では薩摩芋は広く栽培され、食卓を豊かにしてきました。日本へは17世紀の初めに、中国から沖縄を経由して薩摩、現在の鹿児島県に伝わりました。薩摩芋の名前の由来もここにあります。当時、薩摩藩では飢饉に苦しむ人々が多くいました。そんな中、薩摩芋は救荒作物として大きな期待を寄せられました。江戸時代中期には、青木昆陽という学者が薩摩芋の栽培を推奨し、飢饉対策として全国に広まるよう尽力しました。青木昆陽の努力もあり、薩摩芋は各地で栽培されるようになり、多くの人々の命を救いました。現代の私たちも、様々な品種の薩摩芋を味わうことができます。甘くて美味しい安納芋や、鮮やかな紫色の紅あずまなど、品種改良も進み、様々な料理に活用されています。遠い異国からやってきた薩摩芋は、長い歴史の中で日本人の食文化に深く根付いてきたと言えるでしょう。