
有馬の名を冠する料理:山椒の風味を味わう
「有馬」と聞けば、多くの人が兵庫県にある名高い湯治場を思い浮かべることでしょう。しかし、料理の世界においても「有馬」という名は、山椒の風味を巧みに活かした料理に冠される特別な名前です。これは、兵庫県の有馬地方が古くから山椒の産地として名を馳せていたことに由来します。
特に、実山椒を使った料理には「有馬」の名が付けられることが多く、代表的なものとして「有馬煮」が挙げられます。青々とした山椒の実を用いた有馬煮は、淡水魚や野菜などを甘辛く煮付けた料理です。山椒特有の爽やかな香りとピリッとした辛味が、食材本来の持ち味を引き立て、奥深い味わいを生み出します。例えば、ふっくらと煮上がった筍の有馬煮は、山椒の風味が筍の甘味を一層引き立て、箸が止まらなくなる美味しさです。また、鯛や小ぶりの川魚を使った有馬煮は、魚の臭みを消すと同時に、上品な風味を添えてくれます。
有馬煮以外にも、山椒の葉や粉山椒を使った料理にも「有馬」の名を冠することがあります。焼き物や和え物などに山椒の葉を添えることで、彩りを豊かにすると同時に、香り高い一品に仕上がります。また、粉山椒を振りかけることで、料理に刺激的なアクセントを加えることができます。うどんや蕎麦などの麺類に添えられる七味唐辛子にも、山椒が欠かせない材料の一つとして含まれています。
このように、古くから人々に愛されてきた「有馬」という名前は、山椒の風味と共に、日本の食文化における一つの伝統を象徴していると言えるでしょう。山椒の産地である有馬という地名が、料理名にも受け継がれていることは、日本の食文化における地域性と、山椒という香辛料の重要性を示す好例と言えるでしょう。