
白カビチーズ、カマンベールの魅力
カマンベールチーズは、フランス北西部ノルマンディー地方のカマンベール村で生まれた、白いカビに覆われたチーズです。牛乳を原料とし、熟成が進むにつれて外側の白いカビが厚みを増し、内側はとろりと柔らかく、きめ細かい舌触りへと変化していきます。口に含むと、ミルク本来のまろやかな風味と、カビが生み出す独特の芳香が絶妙に混ざり合い、豊かな味わいが広がります。
このチーズの名前は、発祥の地であるカマンベール村に由来しています。誕生の背景には、フランス革命の混乱がありました。18世紀末、ブリー地方から逃れてきた聖職者からチーズの製法を教わったマリー・アレルという農家の女性が、その製法を改良し、カマンベールチーズを作り出したと言われています。当初は円柱形で作られていましたが、19世紀後半、販売効率を高めるために木箱に詰めて売られるようになり、現在の円盤型へと変化しました。
今日では、世界中で様々な種類のカマンベールチーズが作られています。しかし、「カマンベール・ド・ノルマンディー」という名称は、フランス政府によって原産地呼称保護(AOC)に指定されています。これは、ノルマンディー地方の生乳のみを使用し、伝統的な製法を守って作られたものだけが名乗ることができる特別な称号です。厳選された原料と昔ながらの製法が生み出す「カマンベール・ド・ノルマンディー」は、他のカマンベールチーズとは異なる、格別な風味と奥深いコクを備え、まさにチーズの最高峰と呼ぶにふさわしい逸品です。