
板ずりの魅力:野菜を美味しくする技
板ずりとは、野菜の表面に塩をまぶして、まな板の上で転がし、こすりつける伝統的な調理技法です。主に、きゅうり、ふき、オクラなど、表面に細かい産毛が生えている野菜や、アクが強い野菜に対して行います。この調理法は、野菜の表面をきれいにするだけでなく、食感、色味、風味など、様々な面で良い効果をもたらします。
まず、板ずりをすることで、野菜の表面についた汚れや産毛、そして目には見えない細かなごみなどを物理的に取り除くことができます。これにより、野菜本来のきれいな色と風味が引き立ちます。特に、きゅうりのような緑色の野菜は、板ずりすることでより鮮やかな緑色になります。また、ふきの場合は、板ずりによって筋や皮を取り除きやすくし、えぐみを軽減する効果もあります。
次に、塩をまぶしてこすりつけることで、野菜の細胞壁が壊れ、余分な水分が排出されます。きゅうりなどは水分を多く含んでいるため、そのまま調理すると水っぽくなってしまいますが、板ずりすることで水分が抜けるため、味がぼやけることなく、食感も歯ごたえのある、心地よいものになります。また、野菜から水分が抜けることで、調味料がより染み込みやすくなるという利点もあります。例えば、きゅうりの浅漬けを作る際に板ずりをしておくと、味がしっかりと染み込んだ、おいしい浅漬けを作ることができます。
さらに、板ずりは野菜の青臭さを和らげる効果も期待できます。塩によって野菜の細胞が壊れる際に、青臭さの原因となる成分も一緒に流れ出ていくためです。
このように、板ずりは一見単純な作業ですが、野菜の下ごしらえとして非常に重要な役割を果たしています。古くから日本で受け継がれてきたこの知恵は、野菜本来の味を最大限に引き出し、料理をおいしく仕上げるための、大切な技法と言えるでしょう。