
海苔を巻いた香ばしいせんべい、品川巻き
海苔を巻いた香ばしいせんべい、「品川巻き」。その歴史は、江戸時代に海苔の産地として栄えた品川沖に遡ります。当時の東京湾、特に品川沖は、海苔の養殖に適した豊かな海でした。そこで採れる海苔は品質が高く、高級品として珍重されていました。
当時の人々は、この貴重な海苔を無駄なく美味しく食べる方法を模索していました。採れたての新鮮な海苔を丁寧に炙り、パリッとした食感に仕上げます。そして、香ばしいせんべいに海苔を巻きつけて食べることを思いつきました。これが「品川巻き」の始まりと言われています。当時は、今のように海苔を大量生産することはできませんでした。そのため、海苔を使った料理は非常に贅沢なものだったのです。
この品川巻きは、家庭で作られる際に様々な工夫が凝らされていました。砂糖や醤油で甘辛い味付けをしたり、ゴマや山椒などの香辛料を加えて風味を豊かにしたりと、各家庭で独自の味が楽しまれていました。海苔の磯の香りとせんべいの素朴な味わいは、人々の舌を魅了し、特別なもてなしの料理としても振る舞われました。
時代が変わり、海苔の養殖技術が発達し、海苔の産地も全国に広がっていきました。しかし、「品川巻き」という名前は、海苔とゆかりのある地名として、現代まで受け継がれています。かつては貴重な食材であった海苔を贅沢に使った品川巻きは、時代を超えて愛される伝統的なお菓子として、今も私たちの食卓に彩りを添えています。