
慈姑:和食に欠かせない縁起物
慈姑(くわい)とは、水中に育つ多年草で、オモダカ科オモダカ属に分類されます。その球根のような部分を塊茎(かいけい)と呼び、食用として利用されています。もともと中国が原産地で、温かい地域から涼しい地域まで、アジアやヨーロッパ、アメリカ大陸など広い範囲に分布しています。しかし、野菜として畑で作っているのは中国と日本だけです。日本ではお正月に食べるおせち料理によく使われ、子孫繁栄を願う縁起物として大切にされてきました。
慈姑という名前の由来は、親芋からたくさんの子芋、孫芋が育つ様子が、子供を慈しみながら育てる母親の姿に似ていることから、「慈姑」と名付けられたと言われています。その見た目から、縁起が良いとされ、おせち料理には欠かせない食材となっています。特に、子芋がたくさんついた親芋は「芽が出る」ことを連想させ、縁起が良いとされています。おせち料理では、主に煮物として食べられますが、独特の食感とほろ苦さが特徴です。このほろ苦さは、胃腸の働きを整える効果があると言われています。
慈姑は煮物以外にも、様々な料理に利用できます。薄切りにして油で揚げれば、サクサクとした食感のおかきになります。また、すりおろして汁物にとろみをつけたり、炒め物に加えてシャキシャキとした食感を楽しむこともできます。その他、きんとんや茶碗蒸し、炊き込みご飯など、様々な料理に活用できます。最近では、慈姑の粉を使ったお菓子や、慈姑を練り込んだ麺類なども開発されており、新しい食べ方が広がっています。このように、慈姑は縁起物としてだけでなく、様々な料理で楽しめる、奥深い食材と言えるでしょう。