かんぴょう

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鉄砲巻き:江戸前寿司の粋

鉄砲巻きは、かんぴょうを芯にして巻き上げた、細長い円筒形の巻き寿司です。その名の由来は、ずばりその形が江戸時代の鉄砲の砲身に似ていたことにあります。 江戸時代、鉄砲は最新鋭の武器でした。黒船来航などで海外から持ち込まれた鉄砲は、人々の目に新しく、強い印象を与えました。その力強く、筒状の目新しい形は、様々なものと結びつけられて比喩的に用いられました。当時、人々はかんぴょうを芯に巻かれた細長い巻き寿司を見て、鉄砲の砲身を連想したのでしょう。そして、「鉄砲巻き」という名前が定着していきました。 少し物騒な響きを持つ「鉄砲」という言葉を、食卓に上る寿司の名前に用いるところに、江戸っ子らしい洒落っ気や粋な遊び心を感じることができます。当時の人々は、食を通じて新しい文化を取り入れ、楽しんでいたのかもしれません。 鉄砲巻きの主役であるかんぴょうは、夕顔の実を紐状に剥いて乾燥させたものです。乾燥させたかんぴょうを水で戻し、醤油や砂糖、みりんなどで甘辛く煮詰めて作ります。かんぴょう独特の風味と、噛み応えのある食感が、酢飯と絶妙に調和します。ほんのりとした甘さと、噛むほどに広がる旨味は、日本人の味覚に深く根付いています。 鉄砲巻きは、江戸前の寿司文化を象徴する一品と言えるでしょう。そのシンプルな見た目とは裏腹に、歴史や文化、そして江戸っ子の粋な精神が込められています。現代の食卓でも、手軽に楽しめる鉄砲巻きを通して、当時の雰囲気を味わってみてはいかがでしょうか。