よび塩の役割と使い方

よび塩の役割と使い方

料理を知りたい

先生、『よび塩』って、塩辛くなった魚を、真水につけるんじゃなくて、薄い塩水につけるって、なんだか不思議ですね。どうして薄い塩水につけるんですか?

料理研究家

いい質問だね。真水につけるよりも、薄い塩水につける方が、魚の塩分が早く抜けるんだよ。これを『呼び塩効果』っていうんだ。

料理を知りたい

どうして早く抜けるんですか?

料理研究家

塩分の濃いものと薄いものが接すると、濃度を同じにしようと塩分が移動するんだ。真水だと、魚の表面だけが急に塩分を失って、内部の塩分が抜けにくくなる。薄い塩水だと、魚の表面と内部の塩分の濃度差が小さくなるから、全体から、ほどよく塩分が抜けるんだよ。

よび塩とは。

塩漬けにした魚や、塩につけた保存食から塩を抜く方法の一つに「呼び塩」というものがあります。これは、1~1.5%程度の薄い塩水に食材をつける方法です。「塩で塩を呼び出す」という意味から「呼び塩」と呼ばれ、「迎え塩」と呼ばれることもあります。塩分濃度が5%を超えると、塩が食材から抜けにくくなるため、塩水の濃度には注意が必要です。

よび塩とは

よび塩とは

昔から伝わる調理方法である「よび塩」は、塩漬けにした魚や野菜などの食べものから、濃い塩味をほどよく抜くための技です。塩鮭や塩だら、梅干しなどは、長持ちさせるためにたくさんの塩が使われています。そのままでは塩辛くて食べられないため、塩抜きが必要です。そこで「よび塩」が登場します。薄い塩水に食べものを浸けることで、ゆっくりと時間をかけて、食べものの中にある濃い塩を、薄い塩水が引き出すように、余分な塩分を取り除きます。濃い塩分に囲まれた食べものから、薄い塩水がまるで塩分を「呼び寄せる」ように働くことから、「よび塩」という名前がつきました。「迎え塩」と呼ばれることもあります。

真水に浸けるよりも「よび塩」を使う方が、食べものへの負担が少なく、うま味を逃さずに塩抜きができます。例えば、塩鮭を真水に浸けると、急激に水分が入り込み身が崩れやすくなります。また、せっかくのうま味も水に流れ出てしまいます。「よび塩」では、薄い塩水を使うことで、浸透圧の差を小さくし、ゆっくりと塩分を抜くため、身が崩れたり、うま味が流れ出たりするのを防ぎます。

どのくらいの濃さの塩水を使うかは、食材の種類や塩漬けの期間、大きさなどによって調整が必要です。一般的には、1~5%程度の塩水が用いられます。塩抜きの時間も食材によって異なり、短いもので30分ほど、長いものでは一晩ほどかけることもあります。塩抜きが完了したら、流水で塩水を洗い流し、調理に用います

このように、「よび塩」は、素材の持ち味を最大限に引き出すための、先人の知恵が詰まった調理技法と言えるでしょう。日本の食文化を支える大切な技として、これからも受け継がれていくことでしょう。

よび塩(迎え塩) 詳細
目的 塩漬けにした魚や野菜などの食べものから、濃い塩味をほどよく抜く。
方法 薄い塩水に食べものを浸ける。
原理 濃い塩分に囲まれた食べものから、薄い塩水が塩分を「呼び寄せる」ように余分な塩分を取り除く。
真水よりも、浸透圧の差が小さいため、身崩れやうま味流出を防ぐ。
塩水濃度 食材の種類や塩漬けの期間、大きさなどによって調整が必要(一般的には1~5%程度)。
塩抜き時間 食材によって異なり、30分~一晩。
完了後 流水で塩水を洗い流し、調理に用いる。

よび塩の仕組み

よび塩の仕組み

よび塩とは、食材に塩を振ったり、薄い塩水に浸したりする下ごしらえのことです。この一見単純な作業の中に、実は奥深い科学的根拠が隠されています。それは「浸透圧」と呼ばれる現象です。

浸透圧を理解するためには、まず「半透膜」というものを知る必要があります。半透膜とは、水のような小さな分子は通しますが、塩のような大きな分子は通さない膜のことです。実は、野菜や魚介類などの食材の細胞膜も、この半透膜と同じような働きをします。

食材に塩を振ると、食材の表面に濃い塩水ができます。すると、食材内部の水分は、この濃い塩水の方に引っ張られます。これは、薄い液体から濃い液体へと水分が移動しようとする、浸透圧の働きによるものです。

例えば、キュウリに塩を振ると水分が出てきます。これは、キュウリ内部の水分が、表面の濃い塩水に引っ張られた結果です。ナスなどの野菜をアク抜きするために塩水に浸けるのも、この浸透圧の原理を利用しています。

ここで重要なのは、真水ではなく薄い塩水を使うことです。真水に浸けると、食材の細胞内外で急激な水分移動が起こり、細胞が壊れてしまうことがあります。薄い塩水を使うことで、この急激な変化を防ぎ、食材の組織を壊さずに、ゆっくりと余分な水分やアクを取り除くことができるのです。

よび塩は、食材の水分を抜くだけでなく、旨味を閉じ込める効果もあります。浸透圧によって食材内部の水分が外に出る際、同時に食材の旨味成分も表面に引き寄せられます。この旨味成分が加熱調理によって凝縮され、より風味豊かな仕上がりとなるのです。

このように、よび塩は浸透圧という科学的原理に基づいた、調理の最初の重要な一歩と言えるでしょう。食材の種類や状態に合わせて適切な塩加減や浸ける時間を調整することで、より一層料理の美味しさを引き出すことができます。

よび塩 食材に塩を振ったり、薄い塩水に浸したりする下ごしらえ
目的 食材の水分を抜く、旨味を閉じ込める、アク抜きをする
原理 浸透圧:薄い液体から濃い液体へ水分が移動する現象
塩の種類 真水ではなく薄い塩水を使う(急激な水分移動による細胞破壊を防ぐため)
効果
  • 水分が抜けることで、旨味成分が凝縮される
  • アクが抜ける
  • 風味豊かな仕上がりになる
ポイント 食材の種類や状態に合わせて塩加減や浸ける時間を調整する

適切な塩分濃度

適切な塩分濃度

料理の味付けに欠かせない塩。中でも、素材の旨味を引き出す「呼び塩」には、適切な塩分濃度が重要です。一般的に、呼び塩に使う塩水は、水100に対して塩1~1.5の割合、つまり1~1.5%の濃度が目安とされています。これは、野菜の水分をほどよく抜き、歯ごたえを残しつつ、味を染み込みやすくするのに適した濃度です。

しかし、食材の種類や大きさ、季節、そして目指す仕上がりの状態によって、最適な塩分濃度は変化します。例えば、水分量の多い夏野菜は、冬野菜に比べて濃いめの塩水を使う方が良いでしょう。また、短時間で仕上げたい場合は、やや濃いめの塩水を使い、じっくり時間をかけて旨味を引き出したい場合は、薄めの塩水を使うなど、状況に応じて調整することが大切です。

5%を超える高濃度の塩水を使うと、浸透圧の関係で塩が食材に十分に浸透せず、効果が薄れてしまうので注意が必要です。逆に、濃度が低すぎると、食材の水分と一緒に大切な旨味成分まで流れ出てしまい、味がぼやけてしまう可能性があります。

最適な塩分濃度を一発で見つけるのは難しいかもしれません。そこで、少量の食材で何度か試作し、塩加減を確認しながら調整していくことが大切です。野菜から出てくる水分の量、そして味見をしながら、自分にとって最適な塩梅を探っていきましょう。食材の水分量や味の変化を五感で感じ取る経験を積むことで、徐々に食材の状態を見極め、適切な塩分濃度を判断できるようになります。最適な塩梅を見つけるのも、料理の楽しみの一つと言えるでしょう。

塩分濃度 効果 備考
1~1.5% 野菜の水分をほどよく抜き、歯ごたえを残しつつ、味を染み込みやすくする 呼び塩の一般的な濃度
<1% 食材の水分と一緒に旨味成分まで流れ出てしまい、味がぼやける可能性あり 濃度が低すぎる場合
>5% 浸透圧の関係で塩が食材に十分に浸透せず、効果が薄い 高濃度の場合
高め 短時間で仕上げたい場合、水分量の多い夏野菜の場合 状況に応じて調整
低め じっくり時間をかけて旨味を引き出したい場合 状況に応じて調整

よび塩の実践方法

よび塩の実践方法

呼び塩とは、食材に含まれる余分な塩分や臭みを取り除くための調理方法です。主に、塩漬けされた魚や肉、野菜などに使われ、素材本来の味を引き出す効果があります。

呼び塩を行うには、まず濃度1~1.5%の塩水を用意します。これは、水1リットル(1000グラム)に対して、塩を10~15グラムの割合で溶かすということです。正確に量るためには、計量カップや計量スプーンを使うと良いでしょう。塩は、粒子が細かく溶けやすいものを選ぶのがおすすめです。ボウルに水と塩を入れ、塩が完全に溶けるまで、泡立て器やかき混ぜ棒などでよく混ぜ合わせましょう。水に溶け残った塩の粒は、食材に直接触れてしまい、均一に塩抜きできない原因となるので注意が必要です。

塩水が用意できたら、塩抜きしたい食材をボウルに入れます。食材全体が塩水に浸かるようにしましょう。もし食材が浮いてしまう場合は、落とし蓋や皿などで軽く押さえると良いです。食材が大きかったり、厚みがある場合は、包丁で切り込みを入れることで、塩が浸透しやすくなります。

浸す時間は、食材の種類や大きさ、塩漬けの程度によって調整します。数時間から一晩が目安ですが、薄いものや塩気が弱いものは短時間で、厚みのあるものや塩気が強いものは長めに浸けると良いでしょう。途中で何度か様子を見て、塩水の濃度が薄くなっている場合は、新しい塩水に取り替えるのがおすすめです。塩水は、食材から抜けてきた塩分や臭みを含んでいるため、交換することでより効果的に呼び塩を行うことができます。

塩抜きが終わったら、食材を流水で丁寧に洗い流し、余分な塩分を取り除きます。その後、清潔な布巾やキッチンペーパーなどで水気をしっかりと拭き取れば、調理に使うことができます。呼び塩を行うことで、食材の塩加減が調整され、素材本来の旨味を味わうことができるようになります。

項目 説明
目的 食材の余分な塩分や臭みを取り除き、素材本来の味を引き出す
塩水濃度 1~1.5%(水1リットルに対して塩10~15グラム)
塩の種類 粒子が細かく溶けやすいもの
塩水の作り方 水に塩を入れ、完全に溶けるまで混ぜる(溶け残りに注意)
食材の浸け方 全体が塩水に浸かるようにする(浮く場合は落とし蓋、大きい場合は切り込み)
浸漬時間 食材の種類や大きさ、塩漬けの程度による(数時間~一晩)
塩水の交換 塩水濃度が薄くなったら交換する(効果的に塩抜きできる)
仕上げ 流水で洗い、水気を拭き取る
効果 塩加減の調整、素材本来の旨味を引き出す

まとめ

まとめ

昔から伝わる塩蔵品の調理技法である「呼び塩」について、詳しく見ていきましょう。呼び塩とは、塩漬けにした食材を水に浸して、余分な塩分を取り除く作業のことです。塩抜きとも呼ばれますが、ただ塩を抜くだけでなく、食材本来の持ち味を引き出すための重要な工程です。

呼び塩の原理は、浸透圧にあります。細胞膜を隔てて濃度の異なる液体が存在する場合、濃度の低い方から高い方へ水分が移動しようとします。塩漬けされた魚などは、身の中の塩分濃度が高くなっています。この状態の魚を真水に浸すと、身の周りの水は塩分濃度が低いので、水分が身の中へと移動し、同時に身の中の塩分が水中に溶け出します。これが呼び塩の仕組みです。

適切な塩分濃度と浸漬時間は、食材によって異なります。魚の大きさや塩漬けの期間、種類などによって調整する必要があります。薄い塩水に長時間浸ける方法と、真水に短時間浸ける方法があります。一般的には、塩鮭や塩鯖などの切り身であれば、1リットルの水に対して小さじ1杯程度の塩を加えた薄い塩水に、30分から1時間ほど浸けるのが良いでしょう。

呼び塩を行うことで、塩辛さを抑えるだけでなく、身がふっくらみ、しっとりとした仕上がりになります。また、魚の臭みも和らぎ、旨味が増す効果も期待できます。家庭で塩鮭や干物などを調理する際に、ぜひ呼び塩を試してみてください。ひと手間かけるだけで、いつもの食卓がより豊かなものになるはずです。古くから伝わる調理技法には、食材を美味しく食べるための知恵が詰まっています。現代の食生活にも、積極的に取り入れていきましょう。

呼び塩とは 原理 方法 効果
塩漬けした食材を水に浸して余分な塩分を取り除く作業。食材本来の持ち味を引き出すための重要な工程。 浸透圧。塩漬けされた食材を真水に浸すと、水分が身の中へ移動し、同時に身の中の塩分が水中に溶け出す。 食材によるが、薄い塩水に長時間、または真水に短時間浸ける。
例:塩鮭や塩鯖などの切り身の場合、1Lの水に小さじ1杯程度の塩を加えた薄い塩水に30分〜1時間ほど浸ける。
  • 塩辛さを抑える
  • 身がふっくら、しっとり仕上がる
  • 魚の臭みを和らげ、旨味が増す