
シチリアの甘酸っぱいナス料理:カポナータ
カポナータとは、イタリアのシチリア島で生まれた伝統的な野菜料理です。主役となるナスは、油で揚げてうま味を閉じ込め、とろりとした食感を生み出します。このナスに、香味野菜が加わります。セロリは独特のさわやかな香りを添え、玉ねぎは甘みを加えて全体をまろやかにまとめます。そして、オリーブの実とケッパーが、独特の塩味と酸味でアクセントを加えます。さらに、松の実がコクと香ばしさをプラスし、風味豊かな味わいを作り上げます。
これらの具材をまとめるのが、甘酸っぱいソースです。酢と砂糖がベースとなり、そこにトマトのうま味と香味野菜の風味が溶け込み、奥深い味わいを生み出します。このソースでじっくりと煮込むことで、それぞれの具材の持ち味が一体となり、複雑で奥行きのある味わいが生まれます。
カポナータは、イタリア料理では前菜としてよく食卓に上ります。カリッと焼いたパンに乗せてブルスケッタのように楽しむのも定番です。また、パスタに絡めてソースとして使うのもおすすめです。トマトソースとはまた違った、甘酸っぱさと野菜のうま味がパスタとよく合います。さらに、肉料理の付け合わせとしても活躍します。濃厚な肉料理に、カポナータのさっぱりとした風味がよく合い、箸休めにもなります。
カポナータの歴史は古く、18世紀頃にまで遡ると言われています。当時のシチリアでは、保存食として作られていたという説もあります。現在でも、シチリアの家庭では定番料理として親しまれており、レストランでも広く提供されています。家庭ごとに受け継がれたレシピがあり、具材や味付けも様々です。ナス以外にも、パプリカやズッキーニなどの野菜を加えることもあります。時代を超えて愛され続けるカポナータは、シチリアの食文化を代表する料理と言えるでしょう。