
魚の旨味を余すことなく味わう「なか落ち」
「なか落ち」とは、魚を三枚におろした後に残る、中骨とその周辺に付いた身のことです。魚の背骨に沿って、腹骨の上部に位置し、ごくわずかな量しか取れません。しかし、魚本来の味が凝縮されている貴重な部分であり、捨てずに様々な料理に役立てられています。
この骨周りの身は、加熱することで骨から美味しい成分が溶け出し、独特の風味と深い味わいが生まれます。魚の種類によってその味わいは異なり、脂の乗った魚では濃厚でコクのあるだしが取れます。一方、白身魚ではあっさりとして上品なだしが取れ、それぞれの魚の持ち味を楽しむことができます。こうした理由から、和食では古くから大切に扱われてきました。
なか落ちは家庭料理から料亭まで、幅広く使われる食材です。例えば、味噌汁や煮物のだしとして加えることで、料理全体に深みが増します。また、細かく刻んでつみれに混ぜ込んだり、炊き込みご飯に利用したりと、様々な調理法で楽しむことができます。ご飯と一緒に炊き込むと、骨から出る良い香りがご飯全体に広がり、食欲をそそります。さらに、油で揚げて骨せんべいとして味わうのもおすすめです。カリッとした食感と香ばしい風味は、お酒のおつまみにもぴったりです。このように、なか落ちは無駄なく魚を味わう知恵が詰まった、日本料理ならではの食材と言えるでしょう。