CADで変わるキッチン設計の世界

CADで変わるキッチン設計の世界

設計を速く正確にする

台所を作る際の設計図を描くことは、昔は大変な手間と時間がかかる作業でした。設計士は、大きな製図板に鉛筆や定規、コンパスを使って、線を引いたり、図形を描いたりしていました。描く作業一つ一つに神経を集中させ、正確さを求められるため、多くの時間と労力が費やされていました。もし、設計の途中で変更が生じた場合は、最初から描き直さなければならず、大変な苦労でした。

しかし、計算機を使って設計図を描く方法（ＣＡＤ）が登場したことで、状況は大きく変わりました。ＣＡＤでは、計算機につながった描き板のような装置の上で、専用の筆のような道具を動かしたり、画面の中の絵を指で触ったりすることで、線や図形を簡単に描くことができます。修正も簡単で、間違えた部分をすぐに直すことができます。設計の変更が必要になった場合でも、変更部分だけを直せば済むので、作業時間を大幅に短縮できます。また、寸法や角度も正確に入力できるため、設計ミスが減り、より精密な設計図を作成できます。

ＣＡＤの導入によって、設計士は図面を描く時間と労力を大幅に節約できるようになりました。その結果、より多くの時間を、利用する人のことを考えた使い勝手の良い台所の配置や、見た目の美しさといった創造的な仕事に費やすことができるようになりました。お客様一人ひとりの要望に合わせて、より柔軟に設計を調整することも可能になり、満足度の高い台所作りを実現できるようになりました。

分かりやすい完成予想図

設計図面だけでは想像しづらい完成後の台所の様子を、コンピューターを使って立体的に表現することで、より分かりやすく伝えることができます。これが、設計支援ソフトの大きな利点の一つです。平面図だけでは把握しにくい奥行きや高さ、そして全体の雰囲気が、立体的な絵として画面に映し出されます。

お客様は、この完成予想図を見ることで、まるで実際に台所に立っているかのような体験ができます。そのため、色の組み合わせや、壁や床材の質感、調理器具や食器棚の配置などを、より具体的に検討することが可能になります。例えば、白い壁に木目の棚を合わせたらどうか、床を暗い色にしたら部屋全体がどのように見えるかなど、様々な組み合わせを視覚的に確認できます。

また、完成予想図は様々な角度から台所を見ることができるため、作業中にどのように動くか、道具はどこに収納すれば使いやすいかなど、使い勝手に関わる部分も事前に確認できます。冷蔵庫から食材を取り出し、シンクで洗い、調理台で作業し、コンロで加熱するという一連の流れを、実際に自分が動く姿を想像しながらシミュレーションできます。これにより、使いにくい配置に後で気付くという失敗を未然に防ぐことができます。

このように、完成予想図を用いることで、お客様と設計者との間で、よりスムーズに意思疎通を図ることができます。お客様は頭の中のイメージを具体的に伝えられ、設計者はそのイメージを正確に理解し、図面に反映させることができます。さらに、設計支援ソフトでは、お客様の要望に合わせて、その場で立体画像を修正することも可能です。例えば、棚の高さを少し変えたい、窓の位置をずらしたいといった要望にも、すぐに対応し、変更後の様子をお客様に確認してもらうことができます。このような双方向のやり取りは、お客様の満足度を高める上で非常に効果的です。お客様にとって本当に使いやすい、理想の台所を実現するためには、完成予想図は欠かせないツールと言えるでしょう。

システムキッチンの設計

調理場を新しく作る時、システム調理台は大きな役割を果たします。システム調理台は、様々な大きさや部品を組み合わせるため、設計の段階で正しい寸法を測り、どこに何を置くかをしっかり決めておくことがとても大切です。設計図を描くための道具として、計算機を使って図形を描く方法（キャド）は、システム調理台の設計でも役に立ちます。それぞれの製造会社の製品情報を計算機に取り込むことで、正しい寸法に基づいた設計図を作ることができます。流し、加熱調理器、収納棚などの配置を画面上で自由に動かし、一番良い配置を検討できます。

例えば、調理台の高さは使う人の身長に合わせて調整することが重要です。低すぎると腰に負担がかかり、高すぎると作業がしづらくなります。キャドを使うことで、様々な高さを試して、使う人にぴったりの高さを決めることができます。また、冷蔵庫や食器棚の位置も、作業の流れをスムーズにするために重要です。キャドを使えば、調理場全体を見渡しながら配置を検討し、動きやすい調理場を作ることができます。

さらに、水道管や電気の配線といった設備の情報も計算機で管理できるため、工事でのミスを防ぎ、工事をスムーズに進めることができます。例えば、水道管の位置を事前に確認することで、調理台を設置する際に干渉しないように設計できます。電気の配線についても、コンセントの位置を最適化することで、家電製品を使いやすく配置できます。このように、キャドを使うことで、システム調理台をより効率良く、正確に設計し、お客様の希望に合わせた最高の計画を立てることができます。見た目だけでなく、使いやすさや安全面も考慮した設計が、快適な調理場を作る鍵となります。

プレゼンテーション資料の作成

設計図や立体模型は、お客様への説明資料としても役立ちます。完成予想図や外観図を高画質で用意することで、設計内容をより分かりやすく伝えることができます。例えば、お客様の要望に合わせてキッチンの配置や動線を変更した際の完成イメージを、視覚的に提示できます。また、動画にすることで、キッチンの使い勝手や、引き出しの開閉の様子、冷蔵庫の扉の開く方向、食器棚の収納力などを具体的に示すことも可能です。

設計図を基に、自然光がどのように入るのか、照明器具の効果はどの程度かといった、空間全体の明るさについても分かりやすく説明できます。さらに、キッチンの床材や壁材の色、質感、模様などを変更した場合の見え方も、リアルに再現できます。これにより、お客様は様々な選択肢の中から、より理想に近いキッチンを選ぶことが可能になります。

加えて、動画を用いることで、完成したキッチンでの作業風景を疑似体験してもらうこともできます。例えば、シンクで野菜を洗う、コンロで調理する、冷蔵庫から食材を取り出す、食器棚に食器をしまうといった一連の動作を動画で見せることで、キッチンの使い勝手や動線を事前に確認できます。これにより、お客様は完成後のキッチンでの生活を具体的にイメージしやすくなり、安心して設計を任せることができるようになります。このように、分かりやすい資料を通して、お客様と完成イメージを共有することで、信頼関係を築き、円滑な作業を進めることができます。

これからのキッチン設計

これからの台所作りは、設計のやり方そのものが大きく変わろうとしています。設計図を描くためのコンピュータ支援設計（キャド）は、既に台所作りを速く正確なものにしてきました。そして今、仮想現実（バーチャルリアリティ）や拡張現実（オーグメンテッドリアリティ）といった新しい技術が、キャドと一緒になることで、さらにすごいことができるようになると期待されています。

仮想現実では、専用の眼鏡をかけることで、まるで本当にそこにいるかのように、まだできていない台所を体験できます。たとえば、新しく作る台所に立って、窓からの眺めを確認したり、冷蔵庫から鍋を取り出す動作をしてみたり、といったことが、実際に完成する前からできるようになります。食器棚の高さや、コンロの位置なども、仮想現実の世界で実際に体験することで、本当に使いやすい台所を作ることができるのです。

拡張現実も、台所作りに役立つ技術です。拡張現実は、今ある部屋に、コンピュータで作った台所の映像を重ねて表示する技術です。たとえば、今使っている台所に、新しいシステムキッチンを置いたらどうなるか、ということを、実際にキッチンを置く前に確認できるようになります。システムキッチンの色を変えたり、食卓の位置をずらしたり、といったことも、すぐに画面上で確認できます。

このように、仮想現実や拡張現実は、台所作りをより分かりやすく、そして楽しいものに変えてくれます。お客さんは、完成形を想像するだけでなく、実際に体験しながら台所作りに参加できるようになります。このような技術を使うことで、誰もが満足できる、理想の台所を実現できるようになるでしょう。