みんなに優しいキッチン設計
料理を知りたい
先生、『ユニバーサルデザイン』って、高齢者や障がいのある人が暮らしやすいようにするっていう意味ですよね?キッチンとか料理の道具で、具体的にどういうものがありますか?
料理研究家
そうだね、高齢者や障がいのある人が暮らしやすいようにというのは大きな目的の一つだけど、ユニバーサルデザインはもっと広く、全ての人が使いやすいようにデザインする考え方なんだ。例えばキッチンで言うと、車いすの人でも使いやすい高さの調理台や、軽い力で開け閉めできる引き出しなどが考えられるね。
料理を知りたい
なるほど。じゃあ、お年寄りも使いやすい包丁とか、そういうのもユニバーサルデザインと言えるんですか?
料理研究家
その通り!握力の弱い人でも使いやすいように、持ち手が太くて軽い包丁や、滑りにくい素材を使ったものなどもユニバーサルデザインのキッチン用品と言えるね。誰でも使いやすいように工夫されていることが大切なんだ。
ユニバーサルデザインとは。
誰でも使いやすい台所作り、料理の仕方について考えてみましょう。例えば、年を取った人や体の不自由な人が暮らしの中で困るような段差や使いにくい道具を取り除く「バリアフリー」という考え方があります。この考え方をもっと広げて、年齢や性別、国籍、体の特徴など、どんな人でも使いやすいように台所や道具を設計することを「ユニバーサルデザイン」と言います。
はじめに
近ごろ、誰もが気持ちよく使えることを目指す『みんなのための設計』の考え方が、台所の作りにも取り入れられるようになってきました。これは、年齢や性別、体の状態、育ってきた環境などに関係なく、誰もが安全に、かつ使い勝手の良い台所を実現するための大切な視点です。これまでの『バリアフリー設計』は、主に年配の方や体の不自由な方のために考えられたものでしたが、『みんなのための設計』はそれをさらに発展させ、すべての人にとって使いやすい設計を目指しています。
たとえば、調理台の高さを自由に調節できるようにすることで、車椅子を使う人だけでなく、背の高い人や低い人、子供にも合わせることが可能になります。また、引き出し式の収納は、奥にある物も簡単に取り出せるため、力の弱い人や背の低い人にとって便利です。さらに、レバー式の水栓は、握力の弱い人でも楽に操作できますし、明るい照明は、視力の弱い人にとって安全に作業するための助けとなります。
このような工夫は、特定の人々のためだけのものではありません。若い人でも、重い荷物を持ったまま水栓をひねったり、高い棚に手を伸ばしたりするのは大変です。また、子供にとっても、大人と同じように台所を使えることは、お手伝いをしたり、料理に興味を持ったりするきっかけになります。『みんなのための設計』に基づいた台所は、健常者も障がい者も、子供も大人も、あらゆる人が共に快適に過ごせる空間を実現します。つまり、特定の人々だけでなく、子供から大人まで、健常者から障がい者まで、あらゆる人が気持ちよく使える台所こそが、これからの時代の理想と言えるでしょう。このように、『みんなのための設計』は、すべての人にとって暮らしやすい台所を実現するための、これからの時代の設計指針と言えるでしょう。
設計の考え方 | 対象者 | 具体的な工夫 | メリット |
---|---|---|---|
みんなのための設計 | 年齢、性別、体の状態、育ってきた環境に関わらずすべての人 | 調理台の高さ調節、引き出し式収納、レバー式水栓、明るい照明 |
|
キッチンの高さ
台所の調理台の高さは、床から85センチから90センチほどに設定されていることが多いです。これは平均的な体格の人にとって使いやすい高さですが、背の高い人や低い人にとっては必ずしも最適とは言えません。背の低い人が高い調理台で作業すると、肩や腕を高く上げ続けなければならず、疲れやすいだけでなく、肩こりや首の痛みを引き起こす可能性があります。反対に、背の高い人が低い調理台を使うと、腰を深く曲げなければならず、腰痛の原因になることがあります。
そこで、家族みんなが使いやすい台所を作るためには、使う人の体格に合わせた高さの調理台を選ぶことが大切です。最近では、高さを調節できる昇降式の調理台も販売されています。レバー操作や電動で高さを変えられるので、料理をする人や作業内容に合わせて最適な高さに設定できます。例えば、野菜を切るときは少し高めの位置に、鍋を振るときは少し低めの位置に調整することで、より楽な姿勢で作業できます。また、調理台を複数設置する場合、それぞれの高さを変えるのも良いでしょう。例えば、メインの調理台は標準的な高さに設定し、別の場所に少し高めの調理台と低めの調理台を設けることで、家族それぞれが使いやすい高さで作業できます。
調理台の高さだけでなく、シンクやコンロの高さも重要です。シンクの底が深すぎると、背の低い人は底まで手が届かず不便ですし、浅すぎると背の高い人は腰を曲げなければならず負担がかかります。コンロの高さが合わないと、鍋底に火が当たりにくかったり、調理中の様子が見づらかったりします。そのため、調理台を選ぶ際には、シンクやコンロの高さにも注意を払い、自分に合ったものを選ぶことが大切です。最近では、ショールームなどで実際にキッチン設備を試せる場所もあるので、購入前に実際に使ってみることをお勧めします。
このように、台所の使いやすさは、調理台の高さに大きく左右されます。家族みんなが快適に料理を楽しめるように、それぞれの体格に合った高さの調理台を選び、使いやすい台所を作りましょう。
項目 | ポイント |
---|---|
調理台の高さ |
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シンク/コンロの高さ |
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その他 |
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収納の工夫
住まいの台所作りにおいて、誰もが使いやすい収納を考えることはとても大切です。特に、歳を重ねた方や体の使いづらい方にとっては、高い場所や奥まった場所に置かれた物は取り出しにくく、負担がかかります。そこで、使う人に優しい収納の工夫を取り入れてみましょう。
まず、棚についてです。高い場所に固定された棚ではなく、高さを調節できる棚を選ぶことで、使う人の身長や状況に合わせることが可能になります。また、奥の方まで手が届きやすい引き出し式の収納も便利です。奥にしまった物を取り出すために、無理な姿勢をとって体を痛める心配もなくなります。
次に、収納場所を分かりやすく表示することも大切です。どこに何があるか一目で分かれば、必要な物を探す手間が省けます。例えば、引き出しや棚にラベルを貼ったり、中身の絵を描いたりすることで、誰でも簡単に必要な物を見つけられます。また、中身が見える透明な容器を使うのも良いでしょう。中身を確認するためにいちいち蓋を開ける必要がなく、スムーズに物を取り出せます。食品の保存容器だけでなく、整理箱や引き出しの中にも活用できます。
これらの工夫は、歳を重ねた方や体の使いづらい方だけでなく、子供にとっても役立ちます。背の低い子供でも、手の届きやすい場所におもちゃや絵本を収納できれば、自分で出し入れする習慣が身につきます。また、整理整頓が苦手な方にとっても、収納場所が明確になっていれば、片付けがしやすくなります。
誰もが使いやすい収納は、快適な台所作りには欠かせない要素です。少しの工夫で、家族みんなが暮らしやすい空間を作ることができます。
工夫の種類 | 具体的な工夫 | 対象者 |
---|---|---|
棚 | 高さを調節できる棚 | 高齢者、障害者、子供、整理整頓が苦手な人 |
引き出し式の収納 | ||
収納場所の表示 | ラベルを貼る | |
中身の絵を描く | ||
中身が見える透明な容器 | ||
収納場所 | 手の届きやすい場所 | |
子供でも届く場所 |
動線計画
台所仕事の手際をよくするには、冷蔵庫、流し台、調理台といった主な設備の間の移動距離を少なく、動きやすい流れを作ることが大切です。よく使う道具や調味料を、使う場所に置いておくことも、動きを減らすコツです。作業場所を広くとることで、車椅子を使う人も動きやすくなります。
台所の動線を考える際には、作業の流れをイメージしてみましょう。例えば、冷蔵庫から材料を取り出し、流しで洗い、調理台で下ごしらえをし、調理台で調理し、盛り付けをする、といった一連の動作が無理なく行えるように配置を工夫します。
段差をなくしたり、滑りにくい床材を使うことで、つまずいたり転んだりする危険を減らすことができます。また、床に物を置かないように心がけることも大切です。高齢者や体の不自由な方にとって、安全な動線計画は特に重要です。
冷蔵庫、流し台、調理台の三点を結ぶ線を想像すると、そこにできる三角形の面積が小さいほど、動きが少ない効率的な台所と言えます。この三角形を「ワークトライアングル」と呼び、理想的なワークトライアングルの長さは、三辺の合計が3.6メートルから6.6メートルと言われています。
さらに、収納場所も動線を意識して計画しましょう。例えば、食器棚は流し台の近くに配置することで、洗い終わった食器をすぐに片付けることができます。また、調理器具は調理台の近くに収納することで、調理中の移動を最小限に抑えることができます。使う頻度に合わせて収納場所を決めることも、作業効率を上げるポイントです。頻繁に使うものは、取り出しやすい場所に置きましょう。反対に、あまり使わないものは、高い場所や奥まった場所に収納しても構いません。このように、動線を意識した収納計画は、日々の台所仕事を快適にします。
ポイント | 詳細 | 対象者 |
---|---|---|
作業動線 | 冷蔵庫、流し台、調理台の移動距離を短くし、スムーズな流れを作る。よく使う道具や調味料を使う場所に置く。作業場所を広くとる。 | 全員、特に車椅子使用者 |
ワークトライアングル | 冷蔵庫、流し台、調理台を結ぶ三角形の面積を小さくする(理想は三辺合計3.6m〜6.6m)。 | 全員 |
安全な動線 | 段差をなくし、滑りにくい床材を使う。床に物を置かない。 | 高齢者、体の不自由な方 |
収納計画 | 使う頻度に合わせて収納場所を決める。食器棚は流し台の近く、調理器具は調理台の近くに配置する。 | 全員 |
照明計画
台所は、刃物や火を使う場所なので、明るく安全な照明の計画が欠かせません。適切な明るさを確保することで、調理中の事故を防ぎ、快適な調理時間を過ごすことができます。
まず、調理台や流し台の上には、手元を明るく照らす専用の照明を設置しましょう。影ができにくく、食材の色や状態を正確に確認できるため、調理の精度が向上します。さらに、作業面に十分な明るさが確保されていると、細かい作業もしやすくなり、目の疲れを軽減できます。
手元だけでなく、台所全体を明るく照らすことも重要です。天井に設置した全体照明は、空間全体の見やすさを向上させ、開放的な雰囲気を作り出します。全体照明を選ぶ際には、部屋全体に光が均一に届くものを選びましょう。影ができやすい場所には補助照明を設置することで、明るさを補完できます。
年を重ねると視力が低下しやすいため、適切な照明は安全な作業のために特に大切です。明るさを確保するだけでなく、光の質にも配慮しましょう。例えば、青白い光は目が疲れやすいので、暖かみのある色の光を選ぶと良いでしょう。また、グレア(まぶしさ)が生じにくい照明器具を選ぶことも重要です。
夜間でも安全に移動できるよう、足元灯を設置するなどの工夫も必要です。足元灯は、夜中に台所を使う際、つまづきや転倒を防ぐのに役立ちます。また、常夜灯として使用することで、夜間の安心感を高めることもできます。
照明の色や明るさを調整できる調光機能付きの照明器具もおすすめです。時間帯や用途に合わせて明るさを調整することで、より快適な台所環境を実現できます。例えば、調理中は明るく、食事中は落ち着いた明るさに調整できます。
このように、様々な照明を組み合わせることで、安全で快適な台所を実現できます。それぞれの目的に合わせた適切な照明計画を立て、快適な調理空間を作りましょう。
場所 | 照明の種類 | 目的・効果 |
---|---|---|
調理台・流し台上 | 専用照明 | 手元を明るく照らし、影を軽減。食材の状態確認、調理精度向上、目の疲れ軽減。 |
台所全体 | 全体照明(天井) | 空間全体の見やすさ向上、開放的な雰囲気。光が均一に届くものを選ぶ。影になる場所に補助照明も。 |
– | 補助照明 | 全体照明で影になる場所の明るさ補完。 |
床 | 足元灯 | 夜間の安全な移動、つまづき・転倒防止、常夜灯として安心感向上。 |
全体 | 調光機能付き照明 | 時間帯・用途に合わせた明るさ調整。調理中は明るく、食事中は落ち着いた雰囲気に。 |
設備の選択
調理場を作る上で、使う人のことを考えた道具選びはとても大切です。誰でも使いやすいように作られた調理場では、家電の選び方も重要になります。例えば、冷蔵庫を選ぶ際には、操作の表示が見やすく、使いやすいものを選びましょう。庫内の整理棚の高さを調節できるものや、引き出し式になっているものなら、中の物を取り出しやすくなります。
食器洗い機は、軽い力で開閉できるものがおすすめです。洗浄コースが分かりやすく表示されていると、誰でも簡単に操作できます。最近では、節水機能付きのものも多く出ているので、環境にも優しく家計にも助かります。
電子レンジは、音声で案内してくれる機能があると、目の見えにくい方でも安心して使えます。加熱時間を細かく設定できるものや、自動で温め時間を調整してくれる機能があると便利です。
加熱調理器を選ぶ際には、温度調節が簡単なものが良いでしょう。火を使わない加熱調理器は、火事の心配も少なく安全です。温度設定が細かくできると、様々な料理に対応できます。また、タイマー機能が付いていると、加熱し過ぎを防ぐことができます。
これらの工夫を取り入れることで、調理場での作業が楽になり、誰でも安全に料理を楽しめるようになります。料理をする人の年齢や体に合わせた道具選びは、より快適で楽しい料理時間につながります。毎日の食事作りが負担にならないように、使いやすい道具を選び、快適な調理場を作りましょう。
家電 | 選ぶポイント |
---|---|
冷蔵庫 | ・操作表示が見やすく、使いやすい ・庫内の整理棚の高さが調節できる、引き出し式 |
食器洗い機 | ・軽い力で開閉できる ・洗浄コースが分かりやすく表示されている ・節水機能付き |
電子レンジ | ・音声案内機能 ・加熱時間を細かく設定できる ・自動で温め時間を調整する機能 |
加熱調理器 | ・温度調節が簡単 ・火を使わない ・温度設定が細かくできる ・タイマー機能付き |